こんにちは 猫の静六です。
薬局では9月から患者フォローアップが義務化され、どのような患者にどんな頻度で連絡するのか?など日々迷ったりしながら取り組まれていると思います。フォローアップについては日本薬剤師会から薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.1版)が公開されています。この取り組みの義務化により、今の医師会長からも意見されてた処方箋の院外⇒院内回帰への議論を止める大きな障壁にはなりそうですが、その障壁の維持にはかなりの労働力が伴います。厚労省からの調剤のありかたについてで述べられている、薬剤師しかできない事と薬剤師以外でも出来る事についてきちんと分別し、積極的に薬局のDX化を進めないと乗り切れないと思います。
話はそれましたが、今日はPTPシートから出してきちんと飲めているか?という事も改めてもっと投薬・フォローアップする必要があるという事について書きたいと思います。
PTPシートの誤飲の事故は結構報告がある
PMDAにはどの薬局でも登録されていると思いますが、PMDAのサイトに中に医薬品・医療機器ヒヤリ・ハット事例等についてというページがあり、そこでヒヤリ・ハットの事例を検索する事が出来ます。また同ページの新規掲載医薬品事例では割と最近の事例について書かれています。その内容を紹介します。
カモスタットメシル酸塩酸錠100mgのPTPシート誤飲事例
事例の具体的な内容 | ナースコールがあり、患者のもとへ行くとカモスタットメシル酸塩酸錠100mgを1錠シートごと内服してしまったとの訴えあり。のどが痛いとのことであった。医師に報告し、緊急で内視鏡を施行した。内視鏡施行し、除去することができた。 |
事例が発生した背景・要因 | 内服時の患者の状況を確認していなかった。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | 内服時にどの程度まで準備が必要か確認する。 内服時に錠剤をシートから出して準備する。 内服を看護師が管理している場合、全例内服を飲むまで見守りを行っていく必要があるのか検討していく。 |
トラネキサム酸カプセル250mgのPTPシート誤飲事例
事例の具体的な内容 | 食事前に一包化した薬とプロマックの袋の開封確認はしたが配薬ケース内にあったトラネキサム酸カプセルは見落としていた。内服実施確認の際に配薬ケースを回収しようと考え一度退室した。夕食後に訪室し内服を確認すると、トラネキサム酸カプセルのカラがないことに気が付き患者に確認すると「飲んでしまった気がする」と話す。CT撮影の結果、誤飲が確認された。 |
事例が発生した背景・要因 | 患者は誤飲当日CCUから転室したばかりであり状態のアセスメントが十分でなかった。配薬ケース内の確認不足であった。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | 一包化できる薬は一包化する。 患者の内服状況をアセスメントする。 配薬ケース内の確認をする。 院内掲示、委員会で報告し患者、職員への注意喚起をする。 |
ネキシウムカプセルのPTPシート誤飲事例
事例の具体的な内容 | 自立しており、自宅でも内服は自己管理していた。入院後も自己管理していた。内服時にシートごと患者本人が誤って服用した。本人より「シートごと飲んだ」と報告を受け、CT撮影し残影確認し、緊急内視鏡検査となり除去した。血腫は出来ていたが、裂傷はなかった。 |
事例が発生した背景・要因 | 検査を受ける患者に対しての配慮が不足していた。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | 検査前の患者に対するアセスメントをきちんと行い、適切に対応する。 |
フルスルチアミン錠25mg「トーワ」のPTPシート誤飲事例
事例の具体的な内容 | 食道癌術後で外来にて経過観察中の患者。自宅で体動困難になり、救急要請にて当院搬送された。本人の話では自宅で食事を取れていなかった。入院後、点滴加療開始、同時に食事摂取も良好であった。入院中は観察部屋の観察室(4床)にいたが、全身状態が改善したと判断し、大部屋(3人部屋)へ転室、在宅もしくは転院の調整をしていた。入院6日後の19時頃、担当看護師が夕食後の配薬のため病室を訪れた際にベッド上で心肺停止状態で発見された。 |
事例が発生した背景・要因 | ・前日、上部内視鏡の気管拡張術を施行しており、食道内にPTPシートを認めなかった。その後、朝昼晩に内服薬を1錠ずつ処方している。その際にPTPシートが食道胃管吻合部に詰まったと考えられる。 ・内服薬は1回ごとに看護師が配薬していたが、服用するまでの確認が不十分であった。 ・当該部署のスタッフに対して1回毎の配薬について確認したところ、シートごと渡す、又はシートから取り出し内服するまで見守るスタッフがおり手順に差異があった。 ・患者が誤ってPTPシートのまま、内服をしてしまったと考えられる。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | ・1回毎に配薬している患者は、PTPシートから取り出して与薬し、飲み込むところまで確認することを徹底する。 ・錠剤毎に切ったPTPシートが患者に渡らないように、配薬方法(一包化・介助者がシートから取り出す等)を検討する。 |
プレドニン錠5mgのPTPシート誤飲事例
事例の具体的内容 | 包装シートを1錠ずつ切り分けて、内服を自己管理していた。ナースコールあり訪室すると「お薬を包装シートごと飲んじゃったの。首元がちくちく痛むの。実は、前にも間違えて飲んじゃった事があって。」との発言あり。担当医師へ報告。レントゲン撮影し、咽頭蓋より尾側に陰影認め、消化器内科依頼となる。CT施行し、食道内に包装シートあり。内視鏡にて食道内にあるプレドニン5mgの包装シートごと除去する。誤飲によって食道内損傷のリスクがあった。 |
事例が発生した背景・要因 | 入院中きちんと内服自己管理できており、包装シートごと誤飲すると思わなかった。以前にも包装シートを誤飲した事があると知らなかった。退院当日であり荷物整理に追われ、慌ててしまい通常とは異なる心理状態下にあった。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | いつもどのように内服しているか、また今までに包装シートの誤飲をした事があったかどうか確認することで、隠れた危険性を指摘し注意を払っていく。患者が時間に余裕を持って行動できるよう配慮していく。申し送りノートへ記載し、スタッフへ周知徹底し再発防止に努めていく。 |
ラシックス錠20mgのPTPシート誤飲事例
事例の具体的内容 | 糖尿病性網膜症による視力低下がある患者に対して、8:30頃、朝食後薬を担当看護師が配薬に行くと「自分で薬を飲む。」と言われたため、薬のシートは開封せず食事のトレイに配薬した。9:10頃、環境整備のために日勤看護師が訪床すると、食事のトレイの上に内服が残っていたので、薬が残っていることを患者に伝え、看護師は水を渡した。内服直後に「喉に違和感がある。痛い。」と訴えがあったため主治医に報告し、直ちに耳鼻咽喉科にコンサルトし緊急CT、咽頭ファイバーを施行したがシートの確認は出来ず。消化管内科へコンサルトして胃カメラ施行、胃内部からラシックス20mg1錠が未開封のまま取り出された。出血等はなく、バイタルサインの変化もなかった。 |
事例が発生した背景・要因 | 入院当日の視力低下の情報を聞き、内服介助の必要性について看護記録に残していたが、夜勤看護師及び日勤看護師は記録を確認していなかった。 夜勤看護師は病棟の取り決めである内服確認を怠った。 患者は寝る前、7時、朝食前の内服薬もあり、その時もシートの開封はせずに配薬したが、全て内服していた。朝食後の内服も「自分で薬は飲める。」と言われたので大丈夫と判断した。 |
実施した、若しくは考えられる改善策 | 発生後から全ての錠剤はシートを外して患者が飲み込むまでを確認することを、スタッフ全員へ周知して徹底している。 |
薬に対する注意喚起は薬剤師が積極的に行おう!
今回の報告は日々服薬状況を確認している病院からのものばかりでしたが、在宅・介護の現場でも十分に起こりえる事だと思います。
- 患者さん・家族・多職種の薬に関わってくださる方へのPTPシート誤飲事例のリスクの説明と注意喚起
- 患者さんの薬に関わる介護・医療スタッフ・家族の手順・方法の統一化
- 誤飲のリスクがある患者さんの場合、誤飲を防げるような調剤方法の提案(一包化等)
といった事を薬局から積極的に情報発信する事で地域連携にも貢献でき、薬剤師としての職能もより発揮できると思います。
今日もありがとうございました。
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