肥料の知識。石灰を上手く使って病気や害虫に強い野菜を作る!

石灰肥料 肥料の知識

こんにちは ねこの静六です。

今日は園芸・家庭菜園には欠かせない石灰について書きたいと思います。

石灰と聞くと酸性土壌の中和や土壌の消毒としての利用を思いつく方が多いのではないでしょうか?今回は石灰を肥料としての視点で紹介したいと思います。そもそも石灰とは何なのでしょう?

石灰とはカルシウムの事。カルシウムは植物を強固にする

石灰とはカルシウム(Ca)の事です。カルシウムは貝殻や卵の殻を強固に保つ為に欠かせない成分です。人でもカルシウムは骨を丈夫にする要素として欠かせませんよね?実は植物にとっても植物体を強固にする大切な成分です。

石灰(カルシウム)の植物に対する働き

石灰には以下のような植物に対する働きがあります。

石灰(カルシウム)の植物に対する働きと特徴
  • 植物の細胞壁や中葉に含まれるペクチン酸と結合してペクチン酸カルシウムになり細胞壁を丈夫にして、病害虫、低温、乾燥などに強くなる。
  • 炭水化物を実へ移行させる。
  • 根を伸長させる。茎 (シュート) や根など器官の先端に存在する分裂組織の生育にカルシウムは欠かせない要素。
  • カルシウムは植物体内で移行性が良くない。(吸収されたカルシウムイオンが、他の陰イオンとすぐに結合し、必要な所まで運ばれないためです。) 
カリカリ梅は石灰とペクチンの性質をうまく利用した加工食品
カリカリ梅

カリカリ梅という噛み応えが病みつきになってしまう加工食品がありますが、カリカリ梅を作る際には卵の殻などのカルシウムを入れて作ります。梅の実のペクチン酸と卵のカルシウムが結びついて、ペクチン酸カルシウムとなりあの特徴ある食感を生み出しています。

石灰(カルシウム)はどのように土壌から吸収されるのか?

石灰は土壌では4つの形で存在しています。

土壌の石灰の様子
  • 水溶性石灰(根から吸収されるカルシウムイオン単独の状態、土壌にはくっつかないので土壌から流失しやすい。)
  • 有機酸石灰(地中の有機物が微生物によって分解されて出来る有機酸とくっついた石灰。根から吸収され、土壌からの流出も少ない。キレート効果による植物体内でのカルシウムのスムーズな移動も期待できる。)
  • 土壌コロイドとくっ付いた石灰(この状態では石灰は根から吸収されない。水溶性石灰が土壌から減ると少しずつ溶けて水溶性石灰に変わる。)土壌の石灰の多くはこの形
  • 難溶性石灰(土壌中の炭酸イオンや硫安などのSO₄2⁻を多く含む肥料の成分と結合して炭酸カルシムCaCO₃や石膏CaSO₄等の難溶性石灰になる。植物の根から出る根酸や土壌中の微生物が作る有機酸で少しずつだが溶けて吸収されたりもする。)

土壌中の石灰の概要図

土壌では粘土鉱物と腐植がくっついて粘土・腐植複合体を形成しています。通常これを土壌コロイドと呼びます。この土壌コロイドは表面にマイナス(-)の荷電をもっていてプラス(+)の荷電をもつカルシウム(Ca2⁺),マグネシウム(Mg2⁺),カリウム(K⁺)アンモニウムイオン(NH4⁺)などの肥料成分を吸着保持する肥料成分のバッテリーの役割を担っています。ただし、土壌コロイドにくっつけられるプラス(+)の肥料成分量(保肥力)には限度があるので、例えばマグネシウム(Mg2⁺)やアンモニウムイオン(NH4⁺)が多すぎるとカルシウム(Ca2⁺)が土壌コロイドにくっつくことが出来ず、そのまま土壌から流出したり、難溶性の石灰に変わってしまいます。


つまり、石灰(カルシウム)はライバルの肥料成分の存在や、難溶性石灰となったりするために、植物体吸収されにくく、吸収されても植物体内での移行性があまりよくないという事になります。

石灰を上手く効かせるにはどうすればよい?

土壌に散布された石灰を効率よく植物に利用させるのが難しい事が先ほどまでの内容でわかると思います。

石灰(カルシウムは)植物が結実する生育後期に沢山必要です。例えばトマトの実がまだ小さい時にカルシウム不足になると尾腐れ症になってしまいます。

通常の野菜作りの書籍に書かれているような、植えつけ2週間前に土壌の殺菌・中和目的で使用する苦土石灰などの石灰だけでは難溶性の石灰が形成されてしまっていたりして、作物が土壌から十分に石灰を吸収できなくなる事も多い為、最近では下記の様な使われ方も併せて行われています。

石灰の効かせ方
  • ぼかし肥料にカキ殻をまぜて元肥として施肥する。そうする事で有機物の分解時に有機酸石灰が形成され、長期にわたって根が吸収できる石灰を供給する環境を作ると共に、有機酸石灰のキレート効果で植物体内でのカルシウムのスムーズな移動が期待できる。
  • 石灰を水や有機酸(酢酸、木作酢、竹酢、柿酢)などに溶かして直接葉面や果実茎等の植物体全体に散布して散布部位から直接吸収させる
  • お酢100㎖に卵の殻2個程度入れて丸1日置いて溶かす。(お酢と卵の殻を中和させて酢酸カルシウム(有機酸カルシウム)をつくる。出来た酢酸カルシウム液を300倍程度で希釈し葉面や土壌に散布

私自身は以下の2通りで使用しています。

  1. 卵の殻2個とクエン酸を使った方法
  2. 苦土石灰1gをお酢40㎖で溶かし、それを水4㍑で薄めたものを葉面・茎・土壌に散布する

使い分けは特にありません。私は卵の殻を再利用したいと思い、主に1番の方法で使用していますが、苦土石灰を使用した方がカルシウム以外にマグネシウムの補給も行えるので、2番の方法を使用するのも良いと思います。

卵の殻2個とクエン酸を使った方法はシシリアンルージュハイギャバトマトというトマト栽培をした時の記事に詳しく書いています。興味がある方は下のリンクを覗いてみてくださいね。

その他、石灰の種類と特徴、使い方を以下に載せてみました。

肥料成分特徴
生石灰強いアルカリ性で再生中和力は速効性あり、土壌に施用して7日~10日経って植付け可能。生石灰の水溶液をトマトの株元に流し込むと青枯れを止めることが出来る。
消石灰強いアルカリ性。空気中の二酸化炭素とくっついて炭酸カルシウムに変わってしまうので施肥後は土とよく混和する。
炭酸カルシウムアルカリ性、緩効性の中和力の為すぐに作付け可能。水溶懸濁剤を白菜を植えた直後に根元に灌注すると根コブ病の予防になる。
苦土石灰アルカリ性。1000倍の上澄み液を大根にまくと軟腐病が止まる。
カキ殻石灰アルカリ性。効き目は穏やか。キュウリやピーマンの生育中にそのまま振りかけるとほとんどの病気を抑える。カキ殻を木酢や竹酢と混ぜて葉面散布や灌注すると耐病性が高まったり、枝豆の増収、イチゴの肥大、日持ちがよくなる。
ホタテ貝殻石灰イネに粉末を直接散布するとイモチ病が止まる
硫酸石灰(石こう)酸性。PHが5.5以下なので、土壌をアルカリにせずに石灰を効かせられる。中性からアルカリ土壌向き。リンドウに追肥する事で灰色カビ病が治る。
過リン酸石灰酸性。PHが3前後と低い。硫酸カルシウム(石こう)を50%程度含む。リン酸肥料としての利用やジャガイモ、サツマイモなど、土壌をアルカリ化したくない場合のカルシウム施肥として役立つ。
過石水にしてリン酸とカルシウムの液体肥料としても利用できる。
硝酸カルシウム酸性。吸湿性が高い。窒素肥料に指定。水耕栽培によく使用される。

今回は肥料として利用する石灰の役割を紹介させていただきました。

石灰を上手く利用できれば作物を病害虫や気候などの変化に強くし、農薬の使用を減らす事にもつながると思います。

趣味を楽しみながら色々な事を試してみる事はとても面白いと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

消石灰肥料

苦土石灰肥料 

粒状で使いやすいです。紫陽花の色変えのためのアルカリ化にも使っていますが、3~4日で効果が出てきています。この商品を知ってからは苦土石灰はこればかり使っています。

カキ殻石灰肥料

ホタテ貝殻石灰

過リン酸石灰肥料

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