病害虫の知識。アザミウマの特徴と有効な農薬を紹介

農薬の知識

こんにちは ねこの静六です。

今回は初夏から秋口に大発生する害虫アザミウマの特徴と私が使用して効果があった農薬を紹介したいと思います。

私が借りている貸農園を歩き回ってみるとキュウリやゴーヤ等のウリ科野菜にアザミウマの発生が多く見られます。その他、ピーマン、トマト、ナス、エダマメなどにも発生しています。夏の人気野菜は大抵アザミウマの標的になり易い印象があります。

アザミウマの特徴

キュウリの花アザミウマ
撮影日:2021年7月28日 キュウリの花に付くアザミウマ1.5㎜位の大きさです。

アザミウマはとても小さな虫なので私が家庭菜園を始めた頃にはあまり積極的に対処していませんでした。しかし、放置しておくと作物がウイルスに感染したり、作物の形や味が悪くなったりと想像以上に被害が出る害虫だと知り、それ以降は対処を行うようにしています。

アザミウマの特徴は以下にまとめてみました。

アザミウマの特徴
被害作物     ウリ科(キュウリ、メロン、ゴーヤ)
ナス科(トマト、ピーマン、ナス)
ヒガンバナ科(ネギ、タマネギ、ニラ)
その他野菜、花木、庭木、果樹等、多数の植物が被害対象となる 
形態成虫は体長1~2mm程度の細長い虫体
体色は黄色、灰褐色~黒色系

アザミウマは多種存在するが、作物被害で主だったアザミウマは以下の5種類。
ミカンキイロアザミウマ
ヒラズハナアザミウマ
ネギアザミウマ
ミナミキイロアザミウマ
クロゲハナアザミウマ

肉眼によるアザミウマの種類判別は困難

生態発生時期:5月~10月頃で10回近く発生する事もある。

卵→幼虫→蛹→成虫と完全変態。
蛹の時のみ土中で過ごす。
成虫は卵を葉や幼果などの組織内に1個ずつ産卵する。
一匹の雌の総産卵数は300個~500個

被害幼虫・成虫による花や葉、茎の食害、その他ウイルスを媒介して作物を病気にする事もある。
アザミウマによって媒介される  
ウイルス
トマト黄化えそウイルス(TSWV)
インパチェンスえそ斑点ウイルス(INSV)
アイリス黄斑ウイルス(IYSV)
メロン黄化えそウイルス(MYSV)

アザミウマによるウイルス病についてはJA全農にわかりやすい資料が載っていました➡JA全農
その他特徴 アザミウマに対する農薬の効果には種差・地域差がかなり存在する

アザミウマに対する農薬の効果には種差・地域差がかなり存在する

以下の資料は宮城県の公式ホームページから引用させていただきました。アザミウマ類への殺虫効果の資料となっています。

例えば表1~3のネオニコチノイド系モスピラン顆粒水溶剤の補正死虫率の所に注目してみます。

画像引用先:宮城県「普及に移す技術」第93号 アザミウマ類の各種薬剤に対する感受性
画像引用先:宮城県「普及に移す技術」第93号 アザミウマ類の各種薬剤に対する感受性
画像引用先:宮城県「普及に移す技術」第93号 アザミウマ類の各種薬剤に対する感受性

モスピラン顆粒水溶剤の補正殺虫率はアザミウマの種類や地域によってかなり差がある事がわかります。

アザミウマに効果のある薬剤

アザミウマにはハチハチ乳剤という薬剤がよく効くことで有名で、農家さんではよく使用されていますが、劇物扱いである為、家庭菜園で使用する事はおススメ出来ません。また、ピレスロイド系薬剤でアザミウマに適用のある薬剤(ベニカベジフル乳剤など)も存在しますが、あまりアザミウマに良い効果が私は得られていないので今回は書きません。以上を踏まえて家庭菜園レベルで使える農薬を紹介したいと思います。

⓵アルバリン粒剤:定植時や生育期の使用で他の害虫と一緒にアザミウマも退治

私のブログ内の野菜の育て方の所でアルバリン粒剤はよく登場しています。主に作物の種や苗の定植時に使用しています。アルバリン粒剤には以下の様な特徴があります。(2021年7月28日時点での情報)

アルバリン粒剤の特徴
  • 有効成分はジノテフラン
  • ネオニコチノイド系の薬剤
  • ワタアブラムシ、コナジラミ、ハモグリバエ、ミナミキイロアザミウマ、キスジノミハムシ、カメムシなど幅広い害虫に効果がある
  • 使用できる作物が多い
  • 薬剤のニオイが無い
  • 高い浸透移行性があり、速効性、残効性に優れている
私のアルバリン粒剤の使い方

アルバリン粒剤は定植時や生育期への施用でアブラムシやハモグリバエ、コナジラミ、アザミウマなどをまとめて対処できます。

各害虫に対するアルバリン粒剤の効果の印象は

アブラムシ=ハモグリバエ=コナジラミアザミウマ

といった感じです。(私個人的な使用感です!)

アザミウマに対しては他の害虫よりは多少効きにくい印象があります。

ですので、アルバリン粒剤はアザミウマ類に積極的に使用するわけではなく、アブラムシやハモグリバエ、コナジラミを対象としての定植時の使用が主で、ついでにアザミウマにも効いてくれることを期待して使っています。

②ディアナSC:アザミウマ類に特に効果的なスピノシン系農薬


ディアナSC(有効成分スピネトラム)は比較的新しいタイプの農薬です。スピネトラムについては以下の様な創製経緯が住友化学のHPに載っていました。

スピネトラム(spinetoram)は土壌放線菌Saccharopolyspora spinosaが産生する生理活性物質(スピノシン類)に由来し、Dow AgroSciences社によるスピノシン誘導体の探索研究において、天然物のスピノシン類を化学修飾することによって創製された化合物である。

文章引用先:新規殺虫剤スピネトラム (ディアナ®)の開発 – 住友化学株式

ディアナSCの昆虫に対する作用機序を詳しく書くと以下の様になります。

昆虫の神経伝達系におけるシナプス後膜のニコチン性アセチルコリン受容体とGABA受容体のイオンチャンネルに作用し、神経伝達に異常を起こす事で殺虫効果を示すと考えられています。

画像引用先:新規殺虫剤スピネトラム (ディアナ®)の開発 – 住友化学株式

難しく感じますが、糸電話を例にするとわかりやすいです。糸電話の糸の部分を手で触れるなど何かしら抵抗をかけるときちんと声が届かなくなります。そのような感じで神経の伝達の流れも途中で阻害されると昆虫は正常な動きや反応が出来なくなります。有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、ネライストキシン系、カーバメート系の農薬も多少作用の仕方は異なりますが、正常な神経伝達を邪魔する事で殺虫効果を示します。

ディアナSCの性状・特徴は以下の様になります。

有効成分スピネトラム11.7%                 
性状類白色水和性粘稠懸濁液体
規格100㎖、200㎖
安全データ住友化学株式会社の製品安全データシート
殺虫剤の系統  スピノシン系
使用方法規定の希釈倍数に水で薄めて使用

ディアナSCはフロアブル剤と呼ばれる剤型
フロアブル剤は容器の底に成分が沈殿しやすいので
⓵容器を逆さまにする
②容器を左右に振る
③容器を上下にする

という手順で計量前によく振る
その他特徴幅広い害虫に効果がある
コナガ・ハマキムシ類等のチョウ目害虫、アザミウマ類、ハモグ
リバエ類(ハエ目)、コナジラミ類(カメムシ目)に対して防除効果を発揮し、幅広い害虫の防除が可能
速やかな食害抑制効果
チョウ目害虫に対して、速やかな摂食阻害活性を発揮
ハマキムシ類に優れた効果
各発育ステージ(卵・幼虫・成虫)に高い効果を示す。
収穫(茶は摘採)前日まで使用が可能(稲は収穫7日前まで)

適用作物が多い
ディアナSCの適用と使用法➡ディアナSCの製品情報
2021年7月28日現在

その他、使用上の注意、希釈濃度などはディアナSCの添付文書を確認してください

アザミウマに対するディアナSC使用時に私が注意している事

現状ディアナSCはアザミウマにとても効果のある薬剤です。ですが、今後も薬剤に対する耐性を長く獲得されない為に、アルバリン粒剤が使用できる作物の場合は併用、ディアナSC単独でしか使用できない場合には1回の使用に対しては十分量を使用し、その後は連用しすぎないように心がけたいと思っています。

良い農薬が出てきていますが、使用方法を誤ると薬剤耐性を獲得されてしまったり、効果が十分に現れないばかりか、薬害が出てしまう事もあります。用法用量はきちんと守って使用しましょう!

野菜栽培のヒントになれば幸いです。

最後まで読んでくださってありがとうございました。


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