病害虫の知識。ハクサイダニの特徴と有効な農薬を紹介

ハクサイダニ 農薬の知識

こんにちは ねこの静六です。

今回はハクサイダニの特徴と私が使用して効果があった農薬を紹介したいと思います。

ハクサイダニは逃げるのが得意で、人に見つかるとササっと葉の根元や隙間に隠れてしまいます。また、病害虫被害の少ない厳寒期に発生するのでつい見逃しがちになってしまいます。

冬野菜で成長が遅い場合にはハクサイダニの被害が出ている可能性もあるので確認してみると良いと思います。

ハクサイダニの特徴

ハクサイダニ
撮影日:2022年1月15日。ホウレンソウの根元に逃げ込んだハクサイダニ。普段は葉面で活動していますが、人に見つかるとすぐに隠れます。

ハクサイダニは1㎜程度の大きさがあり比較的発見しやすい害虫です。それでも、人の気配ですぐに隠れてしまったり、害虫被害の少ない厳冬期に発生する特徴があり、私もつい見逃しホウレンソウに沢山発生させてしまいました。

ハクサイダニの特徴は以下にまとめてみました。

被害作物  アブラナ科(ハクサイ、ダイコン、コマツナ、カブ等)
キク科(シュンギク、レタス)
その他 ホウレンソウ、ネギ等

野菜だけではなくホトケノザ、ハコベ等の雑草も好みます
形態成虫は体長1mm程度(肉眼で確認できます)
胴体は赤黒く、脚は赤色
生態発生時期:11月~4月(成虫)
5月~10月頃までは休眠卵として土壌中で過ごし、11月頃から孵化して活動を始める
昼間は主に土壌表面や葉の根元に潜み、夕方や曇りの日に活発に活動する
被害作物の葉や葉の付根あたりの汁を吸います。葉の付け根部分が食害されると作物の生長が止まったり、葉物作物の場合は枯れてしまう事もあります

下の画像はハクサイダニの被害に遭ったホウレンソウの葉です。被害の初期に発見出来ましたが、食害部分はポツポツと白く変色しています。

ハクサイダニに効果がある農薬とは?

ハクサイダニに対する各種薬剤の殺虫効果について研究した文献を2つ紹介したいと思います。

これから紹介する2つの文献で登場する薬剤はハクサイダニへの適用の有無に関わらず効果を研究されています。効果があるから使ってもよいわけではない事だけは注意です。

一つめは東北農業研究の「シュンギクに寄生するハクサイダニに対する各種薬剤の効果」という2012年の文献に載っていたデータです。

画像引用先:東北農業研究 「シュンギクに寄生するハクサイダニに対する各種薬剤の効果」

この研究データの生存虫率と食害頻度より、以下の薬剤がハクサイダニに効果的がある事がわかります。

成分名       商品名
ペルメトリン乳剤アディオン乳剤、ベニカベジフル乳剤など
トルフェンピラド乳剤   ハチハチ乳剤(劇物)
MEP乳剤スミチオン乳剤
マラソン乳剤マラソン乳剤
ミルべクチン水和剤コロマイト水和剤
脂肪酸グリセリド乳剤アーリーセーフ、サンクリスタル乳剤
スピノサド水和剤スピノエース顆粒水和剤

2つめは栃木県農業環境指導センターの「栃木県で発生したハクサイダニに対する各種薬剤の殺虫効果」という2014年の文献に載っていたデータです。かき菜栽培の圃場から採取したハクサイダニに対する効果を研究されています。

画像引用先:栃木県農業環境指導センターの「栃木県で発生したハクサイダニに対する各種薬剤の殺虫効果」

この研究データの死虫率より、以下の薬剤がハクサイダニに効果的である事がわかります。

成分名商品名
プロチオホス乳剤トクチオン乳剤
MEP乳剤スミチオン乳剤
マラソン乳剤マラソン乳剤
ダイアジノン水和剤   ダイアジノン水和剤34(劇物)
フィプロニル水和剤プリンスフロアブル(劇物)
ペルメトリン乳剤アディオン乳剤、ベニカベジフル乳剤など
脂肪酸グリセリド乳剤アーリーセーフ、サンクリスタル乳剤
ピリダベン水和剤サンマイト水和剤(劇物)
トルフェンピラド乳剤 ハチハチ乳剤(劇物)
クロルフェナビル水和剤コテツフロアブル(劇物)

ここまで2つの文献データを紹介しました。地域や環境も異なるため異なる結果も見られましたが、効果のある薬剤の傾向は大きく変わらないように思います。

ハクサイダニに使用する農薬の選択と使用アイデア

次に、先ほどのデータから家庭菜園レベルでハクサイダニに使用できる薬剤のアイデアを紹介したいと思います。家庭菜園レベルなので劇物の農薬は除いて検討しています。

ハクサイダニに適用をもつ農薬はかなり少ないです。

①アーリーセーフ(有効成分:脂肪酸グリセリド)

アーリセーフは有効成分が脂肪酸グリセリドという天然物(ヤシ油)由来の農薬です。虫に対しては気門を封鎖して窒息させる事で殺虫作用を示します。ハダニ類を始め、コナジラミ類、アブラムシ、うどんこ病などに効果のある薬剤です。私はコナジラミ類、アブラムシには効果が高いとは感じませんが、ハクサイダニについては文献のデータ上効果が高く、私自身よく効くと感じています。また、

  • 適用作物が非常に多い
  • 使用回数に制限が無い
  • 有機JAS規格(オーガニック栽培)で使用可能
  • 説明書通り水で希釈するだけなので調整が楽でコストパフォーマンスが良い

といった点も使いやすくて良いと思います。

私のアーリーセーフの使い方

ハクサイダニに対してアーリーセーフはシュンギクにしか適用がありません。直接ハクサイダニに使用するという事になると適用作物が限られてしまいます。ですが、アーリーセーフは野菜類という大きなくくりで、アブラムシ、コナジラミ、ハダニ類、うどんこ病に適用を持っています。

私としては野菜類全般のアブラムシ、コナジラミ、ハダニ類、うどんこ病に対してアーリーセーフを使用し、ついでにハクサイダニにも効いてくれてラッキーという感じで使用します。(2022年1月30日時点の情報)

アーリーセーフは薬液が害虫にきちんと付着しないと効果が出ません。しっかりと十分量散布する事が使用のコツです。

②ベニカベジフル乳剤(有効成分:ペルメトリン)

ベニカベジフル乳剤の有効成分はペルメトリン(蚊取り線香などと同じピレスロイド系)でアブラムシ、アオムシ、コナガ、ヨトウムシ、ハイマダラノメイガ等の害虫に対して適用に持っています。ハクサイダニに対して私が使用した実感では、1回の使用で90%以上は駆除出来ている印象です。また、

  • 速効性と持続性があり、ヨトウムシの若令幼虫では葉の散布で1~2週間効果があると住友化学園芸のHPには書かれています
  • 説明書通り水で希釈するだけなので調整が楽でコストパフォーマンスが良い
  • 適用作物・適用害虫がとても沢山あるので守備範囲がとても広い薬剤

といった点も使いやすくて良いと思います。

私のベニカベジフル乳剤の使い方

ハクサイダニに対してベニカベジフル乳剤はホウレンソウ、シュンギクに適用があります。その他作物に対してはベニカベジフル乳剤の適用作物・適用害虫に対して使用し、そのついででハクサイダニにも効いてくれればラッキーだという感じで使用します。(2022年1月30日時点の情報)

農薬使用の際には添付の文書で適用や使用法・使用量の確認をきちんと行いましょう!

今回はハクサイダニに対する農薬の選択について紹介してきました。アーリーセーフ、ベニカベジフル乳剤は私のブログでもよく登場する薬剤でいろんな作物に使用できるので助かります。ハクサイダニにお困りの方は一度検討されても良いかもしれません。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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