医療安全情報。役立つ薬局ヒヤリ・ハット事例② 緑内障患者に対する医療事故

ヒヤリハット 薬剤/医療安全/介護診療報酬

こんにちは ねこの静六です。

今回は公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業 から緑内障患者の医療事故事例を紹介したいと思います。また、現在調剤薬局で導入が進んでいる、指示箋による調剤、調剤支援システムの根本的な問題点についても紹介しています。

緑内障患者の処方変更を見落とし、眼圧が下がらずオペする事に・・・

事例概要
【実施した医療行為の目的】
緑内障による高眼圧症治療
【事故の内容】
緑内障で当院通院中の患者。当院の院外処方箋は一般名が印字されるシステム。ラタノプロスト点眼薬(キサラタン点眼液)とドルゾラミド・チモール配合点眼液(コソプト配合点眼液)が処方されていたが、眼圧が下がらなかったため、ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)とアイラミド配合懸濁性点眼液の処方に変更。その際、院外調剤薬局で、ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)を、それまでに処方されていたラタノプロスト点眼液(キサラタン点眼液)と間違えて調剤し患者に交付した。その後の外来受診時も同様に間違った点眼液を交付。点眼液変更後、2度目の外来受診時に担当医師が患者が持参した点眼薬を確認し、薬剤取り違え調剤が判明した。患者は3ヶ月以上、以前処方された点眼液を使用していた。患者は左眼眼圧高値が続いており、左眼手術をすることとなった。
【事故の背景要因の概要】
処方箋(ラタノプロスト・チモロール配合点眼液)の内容を調剤薬局のレセプトPCへ入力した際に(ラタノプロスト点眼液)と誤入力し、誤った指示箋にて調剤準備が行われた。
・調剤準備された薬を監査する際は、処方箋原本を使用するが、そこで一般名(ラタノプロスト・チモロール配合点眼液)への変更を見落してラタノプロストのみを見て確認した。
・薬剤指導の際にも、別に処方されていたアイラミド配合懸濁性点眼液の説明に偏り説明したため気づけなかった。

【改善策】
・処方箋の内容をPCに入力後、指示箋を発行し速やかに入力者以外の者が指示箋の入力内容を確認することを徹底する。
・指示箋により調剤準備された薬剤は、処方箋原本と突き合わせ正しく確認する。
・最終監査では、調剤された薬剤、処方箋原本、薬歴内容を照合する。
・服薬指導の際、処方変化について漏れなくヒアリングできるように努める。
・入力ミスをなくす事、また入力内容と調剤された医薬品が正しいかどうか機械によるチェックを行えるようにした。
・当院としては、医療安全に関する委員が該当薬局より要因分析と改善策の報告を受けた後で、再発予防のための情報交換を行った。
公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業より引用

原文のまま引用

監査支援システムや指示箋の問題点

2019年の4月2日の「調剤業務のあり方について」の通知以降、監査支援システムの導入や指示箋に基づく薬剤師以外のスタッフによる薬の取りそろえ業務が浸透しつつあります。これらの仕組みは「処方箋情報のレセコン入力が正確である」事が前提で成り立ちます。以下に指示箋と監査支援システムを導入した際の調剤の流れを簡単に図にしてみました。

指示箋も調剤監査支援システムもレセコン入力が間違っていれば全く機能しません

ぱっと見ると監査支援システムの導入により、投薬までが堅牢になったように見えますが、処方箋情報のレセコン入力が間違っていれば全く機能しません。ですので、レセコン入力の結果ともいえる調剤録と処方箋内容に相違が無い事の確認作業がとても大事になります。

配合剤など一般名と製品名が異なる薬剤の監査は注意

配合剤は一般名と製品名が異なる事がほとんどなので、調剤監査時には注意が必要です。以下に例を載せてみます。

PR.(般)アムロジピン錠5mg➡アムロジピン錠5mg「〇〇」わかりやすい

PR.(般)ラタノプロスト・チモロール配合点眼液 ➡ザラカム配合点眼液 わかりにくい

PR.(般)ラタノプロスト・チモロール配合点眼液 ➡ラタチモ配合点眼液「〇〇」わかりにくいかも

こういったわかりにくい処方で思い込みを防ぐために私は薬情に記載される製品名の隣に一般名が記載されるように設定し、調剤監査時に薬情も確認して思い込みを防げるように対策しました。

ラタチモ配合点眼液 (一般名: ラタノプロスト・チモロール配合点眼液 )といった感じで並列表記されていると監査の際に役立ちます。

薬剤師賠償責任保険に入っていれば安心ではない!

今回の調剤過誤は最終的に左眼のopeと患者様にとって辛い事態になっています。正しい薬をお渡ししていたとしても眼圧が下がったかは不明ですが、この事例では対応した薬剤師に責任が求められる可能性が高いです。

薬剤師の方はこういった事態に備えて薬剤師賠償責任保険に加入されていると思います。この保険では慰謝料や訴訟となった際の弁護士費用等が補償されますが、医療事故に遭われた相手側の交渉は事故を起こした薬剤師と被害を受けた方との直接話し合いを行う必要があります。

責任の程度に関わらず、自分での交渉はかなりの困難を伴います。私の上司が過去に保険を利用した際には一週間程度はまともに勤務のシフトに入れていませんでした。

私も上司が交渉されている状況を間近で見て凄く気が引き締まった事を覚えています。

先人のミスを知り、自分なりに対策を考えてみる事で飛躍的に自身のエラーを防ぐことが出来ます。

まだまだ気を付けておきたいヒヤリ・ハットは沢山ありますので今後も紹介していきたいと思います。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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